【財務の補正】
純資産額は、経営改善計画の効果を評価する上で大きな役割を持っています。
例えば金融機関の期待値は、
「3年以内に黒字化」
「5年以内に債務超過解消、有利子負債の対キャッシュフロー倍率が10倍以下」
というように数値で表します。
したがって、正しい財務数値でなくては、正しい評価ができません。
そこで決算書の数値を実質的な数値に補正する必要が出てきます。
経営改善計画書の書式には、財務内容を書く欄とは別に、「調整事項反映後の純資産額」という項目がある場合もあります。
具体的には、次のことをチェックします。
売上債権の評価(回収不能なものは、ありませんか?)
棚卸資産の評価(実質的に価値がないものはありませんか?)
減価償却不足(赤字の時に減価償却を止めていませんか?)
除去のもれ(除去すべきものはありませんか?)
所有不動産の含み損、含み益(所有資産の簿価と時価の差はありませんか?)
未払金、未払費用の未計上(決算書に乗っていない債務などはありませんか?)
これらの状況は、金融機関もうすうす感づいているものです。
一過性の窮境の場合の簡易的な経営改善計画書であれば、決算書の数値をそのまま使えば良いと思います。
経営状況がかなり悪い場合は、相手もシビアに評価しますから、
(1)言われるまで、決算書の数値を使う
(2)そこそこの数値に変更する
(3)膿を出すつもりで、正しい数値を使う
の選択をしなくてはなりません。
私がお手伝いをする場合は、メインバンクさんに正直に聞くようにしています。
【中小企業特性】
事業再生の現場では、金融機関が中小企業の財務内容を見る場合に、通常の企業と違う見方をする場合があります。
というのは、中小企業の財務は、個人の財務との関係が深いので、個人の財務に考慮するからです。
具体的には、
・経営者借入は、債務とみなさない
・親族からの借入も、債務放棄して貰えば、債務とみなさない
等、様々な例があります。
事業再生の現場では、中小企業特性を加味して財務状況を修正します。
経営改善計画の現場では、まずは、中小企業特性を加味しないまま、計画を進めていけば良いと思います。
債務超過の解消が難しい場合、さらに融資が必要な場合などに限って、中小企業特性も考慮すれば良いと思います。